FC2ブログ

建築系職人2.0

町の便利なクロス屋さん公式ブログ。バージョンアップし続ける職人になるため道中記

第12回【基礎知識】はがれ(めくれ)にくいクロスの考察

 張替え現場の一番の懸案事項は、「はがれる」か「はがれない」かです。

 これは、結構大問題なのです。というのも、はがれにくいことで生じた時間は、利益に反映されないからです。つまり、単価は同じなのです。

 この、はがれないクロスの理由を、考察していきたいと思います。

 とはいうものの、原因はよくわからないのです。職人によって、その認識はマチマチです。

◎乾燥説・・・クロス(ビニール)が乾燥して、繋ぎ止める力が弱まった(朽ちた)ため

◎ボンド・シーラー説・・・糊の接着剤能力を高めるために、混ぜ合わせたボンドや、下地面に塗布するシーラーによるため

◎材料説・・・クロス(ビニール)の種類によるちがいのため。発泡系クロスははがれにくい。乾燥説にもつながる

◎下地湿潤説・・・湿度が高い環境で、下地の表面が乾ききっていないときに施工したため。モルタルなら塗ってちょっとしてから貼ったり、ボードも仕上げてちょっとしてから貼った(ボードは積み重ね保存のため非乾燥)。糊の接着剤が下地内部の水分に誘引され、接着範囲が浸透していった

 ざっと、こんなもんでしょうか。

 乾燥していても、はがれるものもありますし、ボンド使用ならすべてがはがれにくいはずなのに、はがれる部屋もあったりします。

 下地湿潤説は、梅雨の時期をいいますが、これも、同じ時期に貼っているのにもかかわらず、はがれる部屋もあれば、はがれにくい部屋もあるのです。

 いろんなケースがあるので、どれも断定できないのです。となると、複合的に起こる事象かもしれませんね。個人的には、材料説ですかね…。

DSC_0165.jpg
ボードの表面の紙まではぎとってしまい、裏地のグレーが露出!

DSC_0164.jpg
唯一残る部分は、皮肉にもパテ部分・・・!

DSC_0163.jpg
白い部分が、クロスの裏紙がきれいに残った、本来あるべき状態



-------------
 次回の更新日は1/14です
-------------

第11回【基礎知識】このジョイントめくれの理由

DSC_0140.jpg
とあるジョイントのめくれ

DSC_0141.jpg
拡大

DSC_0142.jpg
はがしてみると、パテの上

DSC_0143.jpg
パテの上だけがクロスがついていない


 たまに見かけるこの現象の原因は、パテの上でのジョイントによるものです。

 パテの表面には、クロス貼りの前に行なったペーパー処理時に出た粉が残っています。

 その粉が、クロスの糊を吸収するのです。すると、糊の接着能力が低下します(「第2回【基礎知識】パテの上にクロスがつかない理由」参照)。

 それが時間が経つと、ジョイントのわずかなスキマに水分が入り、ホコリを呼びます。その繰り返しで、ジョイントは徐々にめくれてくる…というわけです。

 ですから、湿度の高い環境で、このような現象が起こります。写真のお部屋はキッチンでした。

 おそらく、住んでいた方は、換気扇をあまりまわさなかったと思います。よく換気をする人の家ほど、こういう現象はあまりなかったりします。

 とはいえ、ジョイントが開く場所は、決まってパテの上です。パテ以外の場所では、開いていないのです。

 ということは、パテの上にジョイントが来ないように貼れば、このようなことはなかったのです。

 ではなぜ、職人はパテの上でジョイントをするのかというと、施工スピードを重視したからです。

 パテの上以外にジョイントをするとなると、もう一本ジョイントが必要になるのです。

 これは、下地ボードの横巾サイズと、クロスの横巾サイズが同じことが原因です。

 材料が3巾で収まるのなら、3巾で収めるのがセオリーです。そのときのジョイントの数は2本です。そこを無理に3本にはしないものです。

 つまり、ボードを貼る大工とクロスを貼る職人は、同じ貼り方をするということです。

 ボードのジョイント部分にパテをして、その上にクロスのジョイントをするのです。なかなか不健全ですね。

 基本的に、大工も最小限の材料で、最低限の作業工程で施工します。クロス職人も同じなのです。

 こういうことから、クロス職人はパテの上でジョイントをしてしまうのです。

 職人によっては、ジョイントを増やしてでもパテ上を避けようとします。こういう職人は、良い職人といえます。もちろんわたしも、パテ上を避けてジョイントをします。

 しかしそれは、余分な工程を必要とします。時間を犠牲にしてしまうのです。それでもパテ上ジョイントを避けるかどうかは、職人のポリシーに委ねられます。

 ほとんどの職人は、残念ながら前者です。施工スピードが早い職人がそうです。

 ただ、パテ上ジョイントは悪だとわかっていても、ジョイントの数は少ないほうが正義と思っている職人もいます。

 こういう職人は、マジメで技術力が高いです。写真の現場でも、コーキングなどが非常に几帳面にうまく打たれていました。

 皮肉なことながら、マジメゆえに懸命にペーパーを擦り、仕上げとしての正義を大義としてパテ上ジョイントをして、結果、ジョイントの劣化を早めているのです。

 残念な話ですが、ほとんどのクロス職人が、これに当てはまります。



-------------
 次回の更新日は1/7です
-------------

第8回【基礎知識】クロスの汚れの正体は

DSC_0116.jpg

 古いクロスに、茶色い汚れがついていたりします。

 じつはこれは、クロスの糊の痕(あと)です。

 施工の段階で、糊のついたクロスの裏地が、仕上がったクロスにベチョっとついてしまうのです。

 糊については、職人はあまり関心を持っていないように思います。「スポンジで拭けばいいよ」と、軽く思っていたりします。

 スポンジで拭いて、糊が落ちれば苦労しません。意外とむずかしく手間なのです。

 糊が取れたかどうかたしかめるには、手でさわればわかります。ヌルっとしてたらまだついています。

 ほとんどの職人は、手でさわりません。スポンジで拭いたという行動意識が、自分を納得させるのです。それで、スポンジで拭いただけで終わるのです。

 そもそも、なぜ糊をつけてしまうのかというと、職人は施工で必死なのです。とにかく仕上げて帰る…の思いです。こういう職人がほとんどです。

 写真は、じつは吹抜けの天井付近です。ですから、よけいでも施工に必死になり、糊をつけないように仕上げる気持ちが希薄になります。

 職人の技術の限界は、こういうところでわかります。

DSC_0117.jpg
●くっきり手形の跡が・・・!

 また、工期の問題があります。ほとんどの現場は、工期がありません。なぜないのかというと、大工工事の部材の発注漏れやミスによる遅延や、むずかしい造りによる施工の遅れです。

 それらのシワ寄せは、クロス屋に降りかかります。それで、急いで貼ることになり、必死になるというわけです。

 糊拭き取りの問題は、わたしはつねに考えていました。それで、ついに解決したのです。

 仕上がったクロスと枠に、95%は糊をつけずに施工する方法です。それについては、いずれお話したいと思います。



-------------
 次回の更新日は12/7です
-------------

第6回【基礎知識】汚れ防止クロスはなぜブクブクになるか

 汚れ防止クロスがきらいな職人はいると思います。貼るとすぐに、ブクブクにふくらむのです。

 原因はかんたんです。それは、「うませ時間」「オープンタイム」が足らないからです。「うませ」と「オープン」は同じ意味です。

 ちなみに、「うませ」とは内包という意味だと思います。糊をクロスに内包させるということです。つまり、糊をクロス(裏地)にしみ込ませるのです。

 しみ込ませるとは、糊(水分)をクロスの裏地に満たせるということです。かんたんにいうと、湿らせるのです。

 「うませ」「オープンタイム」の目安の時間というのは、糊の中の水分による浸透時間と考えられます。要は湿らせ時間なのです。

 糊に含まれる水分により、クロスは伸びます。洗濯物も、濡れているときは伸びますよね。これが重要なのです。その状態が施工のタイミングというわけです。

 そして、ブクブクにふくらむ理由は、まだクロスが伸びきってない状態で施工をするためです。

 クロスを天井や壁に貼りつけると、その場に固定されます。

 一方、クロスはまだ伸びきっていないので、伸びようとしています。伸びた部分が、行き場を失い縦方向に逃げる・・・とうわけです。それがブクブクふくらむという現象になります。

 では、なぜ汚れ防止クロスだけそういう現象こ起こるかといいますと、汚れ防止は一般のビニールクロスの上に、さらにビニールのフィルムで覆われていて硬いのです。

 硬いとはクロスの平面強度の高さです。平面強度とは、平面になろうとする力です。その力が強いので、接着剤の接着能力に勝るというわけです。

 一方の一般ビニールクロスはまだ軟らかく、それこそ柔軟です。平面強度は低く、柔軟なためなんとか接着できていると考えられます。

 どのみち、「うませ時間」「オープンタイム」はビニールクロスにも必要なのです。

 以上が、汚れ防止クロスと一般ビニールクロスの構造をもとに、分析した結果です。

 むかし、ブクブクの現象を「ガスが出る」と真顔で答える職人がいました。「なんのガス?」と聞くと答えられませんでした。

 下地相手はいつものプラスターボードなのに、ガスなどあるはずもありません。

 しかし、だれかが「ガスだ」と言うと、同調してしまうものですね。

 ここに、思考の限界を感じます。自分で考えるのをやめるのです。思考力がないと、自分の知識のみで説明しようとするのです。

 クロス貼りもふくむ建築の工事は、すべては物理で成り立っています。

 もしガスが出るなら、なんのガスなのか、なぜ汚れ防止クロスだけなのか、なぜ一般ビニールクロスは出ないのか。それを比較して考えるべきです。

 うませ時間さえあれば、いわくガスは出ません。なぜ、うませ時間は必要なのか。その理由はなんなのか。クロスの構造もふくめて考えないといけないのです。

 答えは、ただの湿りによる伸びようとする力のあらわれで、その力は接着剤をも凌駕する・・・ということです。

 また、うませ時間が必要だとわかっていても、すぐにクロスを貼ってしまう職人もいます。その理由もあります。いつかお話したいと思います。



-------------
 次回の更新日は11/14です
-------------

第2回【基礎知識】パテの上にクロスがつかない理由

 「パテの上はクロスがつかない」

 これは、むかしから言われていることです。

 結論を言うと、パテにつかないのではなく、ペーパー(サンダー)で擦った粉がパテ上に残り、クロスの裏面の糊を「飛ばす」のです。

 パテにクロスはつきます。実際、総パテ(全面パテ)をしてクロスを貼っても、はがれてくることはありません。

 単に「パテにクロスはつかない」と思うのではなく、その理由をしっかり認識することが大事です。

 理由を知らないと、その対策もできないのです。原因は「粉」なので、粉を取りのぞけば、ピッシャリつきます。

 ちなみに、「つかない」という事実は、都合のいいことでもあります。それは、下地を拾わなくさせるからです。

 下地を拾わないということは、クロスの表面がフラットになるということなのです。パテあとを出さないのですね。

 そんな、下地がまったく出ていないクロスの張替えの現場にかぎって、はがすとパテの部分が浮いていることがあります。

 また、パテ上でジョイントをしている場合は、ジョイントが浮き浮きになっていたりします。これも、粉による接着不良の結果なのです。

 前任者は、懸命にペーパーを擦りまくり、それによって出た大量の粉が糊を飛ばし、結果的に下地の露出を防いだのです。

 皮肉なことですが、これもペーパーをする意義のひとつなのです。

 ですから、パテの上でのジョイントは、かならず浮いてきますので、避けるべきなのです。

 しょうがなくジョイントをしたり、総パテの場合なら、ジョイント部分だけ粉を取りのぞく必要があります。水ローラーを転がすだけでも効果はあります。



-------------
 次回の更新日は10/7です
-------------

 | ホーム | 

プロフィール

インテリアこうち

Author:インテリアこうち
2001年からフリーランスの内装職人。2005年に「町の便利なクロス屋さん」を開設。

リンク

コメントについて

当ブログへのコメントは受け付けておりません。工事依頼はリンクの「町の便利なクロス屋さん」からどうぞ!