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建築系職人2.0

町の便利なクロス屋さん公式ブログ。バージョンアップし続ける職人になるため道中記

第9回【コラム】100%の力を出して仕事をしてはいけない

 聞き捨てならない話ですが、職人はフルパワーで仕事に臨んではいけないのです。

 基本的に職人は、よい仕上げを目指します。しかし、リフォーム工事ともなると、よい仕上がりにならないときがあります。

 古い下地に新規の仕様をくわえるのですから、よくなるわけはないのです。それが、下地不良でクレームになることがあります。

 下地を造るのは大工です。大工も大工で、できることはしています。しかし、最終仕上げのクロス工事で、やっぱり下地不良というわけで、クレームになるのです。

 下地不良なのは、できるかぎりのことをしたクロス屋の責任ではありません。

 ですが、顧客からのクレームは、対応せざるをえません。それで、クレームとしてクロスを張替えることにより、顧客に対する誠意を見せるわけです。

 張替えて下地不良が改善するかどうかはべつとして、とにかく張替えです。しかも、材料費は職人持ちという理不尽極まりない話です。

 わたしも、こういう理不尽さを何回も経験しました。クロス工事において、こういう事例は数多くあります。

 よい仕上がりのために全身全霊をかけた結果、構造上仕方なしのクレームで、材料費を払わされ、再度の工事はもちろんタダ働きになるわけです。一回目の工事費はもらえたとしても、結局は赤字です。これほど惨めで屈辱的なことはありません。

 職人がブチ切れて、クレームをなおしにいかないこともありますが、それは、こういうことを経験していた可能性があります。

 職人に逃げられる内装屋や工務店は、このことを理解しないといけません。これを解決するには、内装屋や工務店などの管理者の経験や国語力がモノを言います。

 クレームの多くは下地の問題ですから、下地が出ざるを得ない構造上の仕組みを、きちんと顧客に伝えられればいいのです。それを、顧客に最初に伝えることです。

 「下地処理はいたしますが、どうしても下地の不陸が露出する可能性があります」とでも言えば、ほとんどの顧客は納得してくれるはずです。

 納得してくれることが、一番重要です。後で説明でもしたら、言いわけみたいになり、顧客に「なんでいまごろそんなことを言うの?」と、よけい怒らせることにもなります。

 そういう説明もしないで、事後処理的に「クロス屋が悪い」としてクレームを出して張替えさせ、「誠意は見せます」となるのです。

 そんな、惨めと屈辱の毎日では、気が狂います。つまり職人には、「かばってくれる管理者」が必要なのです。

 顧客にきちんと説明できる経験と国語力を持つ管理者が必要なのです。しかし、残念ながら、あまりいないように思います。

 そういうことまで考えると、なんらかのクレームがあることを前提として、現場に臨むべきです。ですから、毎回100%の力を出すのは、無謀とも思えるのです。 

 逆にいえば、しっかりしている管理者の現場なら、100%の力を惜しみなく発揮する価値があるということです。とはいえ、やはり全身全霊で挑むのはリスクです。

 100%の力を出さないなら、どうすればいいのかというと、70%くらいの力を出すのがベストです。

 残りの30%は、またなおしに来るつもりでいればいいのです。そうすれば、いざクレームが来ても「ま、70%の力しか出していないからね」と、自分に言いわけができて自分を護れるのです。

 職人の仕事は、自分の分身のようになります。それをダメ出しされたら、自分自身が否定された気持ちになり、死ぬしかないような気持ちになるのです。

 全身全霊で仕事をするべき職業は、年俸何億も稼ぐスポーツ選手だけかもしれません。

 とはいえ、70%ともなると、手抜き感は否めません…まあ、顧客に「70%の仕事をしますから」なんて言うことはないのですが…。しかし、こう考えてはどうでしょう。

 ドラゴンボールの孫悟空は、70%の力でも余裕でヤムチャはおろかフリーザをも倒せるはずです。ポテンシャルの差が重要です。つまり、孫悟空のように、自分自身をかぎりなく成長させればいいのです。

 職人の成長とは、技術力向上もそのひとつです。自分の70%の技術力が、他人の100%の力であり、ハイクオリティーの仕事であればいいのです。

 技術力をパーセンテージであらわすのはむずかしいですが、大事なことは、職人としてやっていくための、クレームに対する精神のコントロールです。

 毎回100%の力でやっている職人は、クレームがあっても対応してくれません。プライドが許さず、「ウチはそんな仕事はしてない」とかあれこれ言いわけをするものです。なおすことが屈辱で、それが耐えられないのです。

 すると、内装屋や工務店は、あきらめて職人を変えるのです。皮肉なことに、技術力がある職人ほど、仕事をなくす傾向にあります。その多くは、プライドゆえのものです。さらに悪いことに、仕事を選んだりもします。

 職人は単純ゆえに、すぐ有頂天になります。ですから、技術力がある職人ほど、やっかいな人間はいません。それでも使いこなすのが、すぐれた管理者というわけです。

 一番いい職人は、技術力は普通で、クレームでもイヤな顔ひとつせずに来てくれる職人です。

 そういう職人なら、たくさん仕事をふりたいと思うはずです。もちろん、技術力が高くて、クレームでもすぐに来てくれる職人が最高…ということになります。

 そんな、すこし気を抜いて仕事をする…これが最良です。たとえ気を抜いた仕事でも、クオリティーが申し分なければいいのです。

 これなら、日々を穏やかに余裕を持って仕事に臨めます。わたしは、そこを目指しているのです。



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 次回の更新日は12/14です
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Author:インテリアこうち
2001年からフリーランスの内装職人。2005年に「町の便利なクロス屋さん」を開設。

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